治療

らんちゅうも生き物である以上、完全に健康管理できる訳ではありません。病気にかかってしまう事もあります。しかし早く発見し適切な処置をすれば、患っている個体の命を助けるだけでなく、他のらんちゅうへの感染も未然に防ぐ事が出来ます。以下ではらんちゅうに見られる代表的な病気に関して治療法をご紹介します。

エラ病

らんちゅうが最もかかりやすい病気です。エラに問題を抱える病気の総称で菌性、ウイルス性など原因が複数あります。沈んだり浮いていたりとにかくあまり動かず、餌の食いつきが悪い場合は既に初期症状ですから、とにかく毎日観察して早期発見を心がけて下さい。

悪化するとエラの片方が閉じてしまったり、両エラが開ききってしまい、餌も食べなくなり死んでしまいます。感染力が高いので、発見した時点で同じ飼育槽のらんちゅうは発病する可能性があります。発症している個体数、症状具合にもよりますが、同じ飼育槽のらんちゅう全てが治療対象だと思うぐらいで対処して下さい。

発見したらまず塩水浴させましょう。一番良いのはそれぞれの原因に直接効果がある薬を用いる事ですが、特定が難しいので悩んでいる間に手遅れになってしまう場合があります。

天然塩を用い、らんちゅうの歳や大きさにより濃度を変えます。稚魚でしたら0.3〜0.5%、当歳魚以降なら0.5%〜0.8%が基準です。水温は28度以上、エアーレーションを必ず行います。

治療中は絶対に餌を与えないで下さい。

塩水は汚れやすいので、水の状態に注意して水換えをします。水換えの際は、水温と塩水濃度を保つように気をつけましょう。期間の目安は一週間です。元気よく泳ぎ、餌を求める行動が通常化すればほぼ大丈夫ですが、必ずその状態で一日様子を見て下さい。それから餌をごく少量だけ与えてみます。勢い良く餌を食べたなら一安心です。もう一日様子を見て問題なければ元の飼育に戻します。

塩水浴は焦らずゆっくり行う事です。中途半端な治療ではすぐに再発し、よけいに悪化します。

水カビ病、白点病

水質は餌の食べ残しや糞の回収など掃除と、適度な水替えを行う事で管理します。

食べ残しや糞は水質悪化の最大の原因です。こまめに取りましょう。飼育槽につく苔は少量ならむしろ水環境の維持に良いくらいですが、あまりに厚くなると水の汚れが付着し、水質悪化の原因になります。水換えにあわせて適度にこすり取ります。

水換えのタイミングは季節、土地柄、飼育環境、水量、水温、らんちゅうの数、餌の頻度などにより変わるのではっきりした基準はありません。水量も、夏場で水温30度以上なら全換えも必要ですし、冬場、水温5度以下の冬眠状態なら蒸発した分だけ新水を継ぎ足す程度にします。週1回を基本として、こまめに観察し適度な回数を探っていきます。

ただし季節、環境に関わらずエアーレーションの泡が長時間残り続けるようなら、かなり水質が悪化していると思われます。即日水換えして下さい。

宇野系らんちゅうの飼育で青水を利用する際、特に注意が必要なのは水換え時の青水の割合です。夏場はプランクトンの繁殖が早い為、多め目に加えるとあっという間に濃度が上がり、すぐ水換えが必要になってしまいます。逆に冬は繁殖が少ないので青水が透明になりがちです。青水の濃度は水温の維持にも繋がりますので、季節によって適度な濃度を保つ割合を探っていきましょう。

白雲病

体の表面に白い雲のようなものがつき始め、そこから全身を包むように覆っていきます。エラにいたると窒息し、そうでなくても最終的には衰弱死してしまう病気です。

一見、水カビ病に似ていますが、原因は菌ではなく寄生虫です。鞭毛虫コスティア、繊毛虫キロドネラが体表に寄生し、らんちゅうが傷を保護しようとして分泌した粘液が白雲のように見えます。水温の急激な変化と水質悪化で起こりやすいので、春、秋頃に注意が必要です。

治療は薬浴と塩水浴の併用が基本です。薬はグリーンFリキッド、トロピカルゴールド、メチレンブルーのいずれかを用います。濃度1%の塩水で薬浴を行い、症状の緩和に従って塩濃度は0.5%まで下げて下さい。

症状が重い場合はまず濃度2%の塩水浴を30分行ってから薬浴に移ると効果があります。
気をつけるのは水温で、水カビ病と違い25度以下で一定に保ちます。原因となる寄生虫が高い水温で活性化するからです。寄生虫の耐久性が高いので、辛抱強く薬浴+塩水浴を続けて下さい。

黒斑病

白雲病の後に体表面が黒くなる症状です。らんちゅうの体力の回復と共に自然治癒するので、特に治療は必要ありません。通常の塩水浴(濃度0.5%程)をすると治りが早くなります。

ただし、もし黒い部分が広がるようなら白雲病が完治していない可能性があります。
白雲病の治療法に移行して下さい。

赤斑病・トリコディナ病

体表面やひれに小さな斑点状の出血が見られ、悪化すると鱗が剥がれ落ち、他の病気が併発します。原因は2種類で、エロモナス菌による感染症と、繊毛虫トリコディナの寄生病です。

菌が原因の場合は自然治癒する事もありますが、感染する場所によっては1〜2週間以内に急死しますので、やはり早期治療するべきです。
寄生虫が原因ですと症状の進行に従い白雲病のような粘液に覆われ、エラにいたると窒息死します。どちらも水質悪化と水温の急激な変化が引き金になりますので、水管理が重要です。

治療は塩水浴を基本として行います。塩水濃度は0.5%、水温は25度以下で保って下さい。薬浴は菌性ならパラザンDもしくはグリーンFゴールドを用いるのが一般的です。
白雲病の症状も見られるようなら、寄生虫が原因の可能性が高いので、薬浴は白雲病の治療を行って下さい。

立鱗病(松かさ病)

鱗の裏側に水泡のようなものができて鱗が逆立ちます。重症になると全身がふくらんで鱗が逆立ち、まるで松かさのように見える事から松かさ病とも言われます。

菌性の赤班病と同じエロモナス菌が原因とも言われますが、実はまだはっきり特定されていません。感染力が低いので蔓延する事はそれほど無いのですが、原因が判明していないだけに重症になると治療が難しく、赤班病を併発する事も多い大変厄介な病気です。

水温が変化しやすい春先の発症が多く、水質悪化がきっかけになるので水管理を徹底しましょう。

治療は塩水浴が基本となります。塩濃度0.5%から徐々に1%まで上げます。水温は25度前後に保って下さい。赤班病を併発している場合はエロモナス菌が原因の可能性が高いので、パラザンDもしくはグリーンFリキッドを用いて下さい。
また、人間が使う消毒殺菌剤アクリノールを使う方法が、治療効果が高いと言われます。1日1〜2回、らんちゅうの患部に直接アクリノールを塗布し、あとは普通に塩水浴させます。

どの方法でも、症状が治まっても1〜2週間はそのまま様子を見て下さい。
慢性化しやすい病気なので焦らずゆっくり完治させる事が大切です。

穴あき病

赤班病、立鱗病と同じ、エロモナス菌が傷口から感染して起こる病気です。始めは小さな白い斑点状のもの見え、だんだん大きくなると共に赤く充血し、少しずつ鱗が落ち組織がただれ大きな穴があきます。ひどい時は内蔵が見えるほどになり、他の病気も併発して死ぬ可能性もある病気です。発症していてもらんちゅうが元気に見える為、油断すると重症化してしまいます。

感染性は低いですが、らんちゅうの抵抗力が落ちると発症する可能性が高くなる為、春や秋の急激な水温変化に気をつけましょう。
また、らんちゅうの移動などの時に傷をつけないように気を配って下さい。

治療法は赤班病、立鱗病とおなじく塩水浴が基本となります。0.5%の濃度に、水温はやや高めの28〜30度に設定して下さい。
軽症なら塩水浴だけでも充分効果がありますが、症状の改善が見られない時や重症の場合は薬浴を併用して下さい。薬はグリーンFゴールド、エルバージュ、パラザンDが適しています。

カラムナリス病(口腐れ、エラ腐れ、ヒレ腐れ、尾腐れ病)

一番最初にご紹介したエラ病と総称される病気の一つです。感染する場所によって名称が変わりますが、すべてフレキシバクター・カラムナリスと言う菌の感染によります。
始めは各場所に黄白色の付着物がつき、進行するとその部分の組織がただれ、溶け落ちるように崩れていき死に至ります。特にエラの場合は感染部の視認が難しいですから、外見上何も無くても日頃見ない行動を取ったらまずエラ病を疑いましょう。
伝染性、死亡率共に高く、とにかく早期発見早期治療が必要です。水温13度以上になると発生し始め、20度以上での発症が多いので、冬場の自然飼育以外では年中注意が必要になります。水質を悪化させない事が何より肝心です。

治療法は塩水浴と薬浴の併用になります。濃度0.5%、水温は25度前後の塩水で、薬はエルバージュかグリーンFゴールド、パラザンDを使用します。一週間様子を見て症状が緩和してきたら一安心ですが、感染力が高い病気ですから治療は辛抱強く完治させましょう。特にエラ腐れは治ったように見えても数日確認してから戻す位、用心を重ねて下さい。(エラ病の項目も参考にされて下さい)

ツリガネムシ病(エピスティリス病)

らんちゅうの体表面やエラに白点病よりやや大きい白い点が出来ます。症状が進むと白点がどんどん大きくなりその周辺が充血し、最終的に鱗がはがれ落ちて穴あき病のようになってしまいます。この露出部分に寄生虫や菌がついて他の病気の併発の恐れもあり、最終的には死ぬ可能性もありますから、そうなる前の治療が肝心です。
原因は原生動物ツリガネムシ(エピスティリス)の寄生です。白点はこのツリガネムシが集まって寄生している事で生じたもので、放っておくとどんどん他のらんちゅうに移っていきます。水温が12度以上になると発生し始めますので、春先以降の水質悪化には気をつけて下さい。

治療法は塩水浴とメチレンブルーを使用します。0.5%の塩濃度、水温は25度前後で保って下さい。メチレンブルーの原液を白点部分に直接塗布してから塩水浴させます。一週間ほど様子を見て症状が改善しない場合は、メチレンブルーの薬浴を併用します。治療中の水悪化に注意し、根気よく続けて下さい。

イカリムシ病・ウオジラミ(チョウ)病

どちらも甲殻類の寄生虫による病気です。他の寄生虫症と比べて特徴的なのは、寄生虫を肉眼で確認できると言う点でしょう。

らんちゅうの体表面に糸くずのようなものがぶら下がっている場合はイカリムシです。5〜10ミリ程あり、碇型の頭部をらんちゅうの体に突き刺して吸血します。

体表面に小さな赤い出血斑があり、2〜5ミリ程の透明で円形の虫がいたらウオジラミです。針のような口を刺し毒素を注入しながら吸血しますので、皮膚炎を併発します。

どちらの場合もらんちゅうは痒がって飼育槽壁面などに体をこすりつける動作をします。寄生数によっては衰弱し死んでしまう事もありますので、早い治療が必要です。発症のきっかけはほとんどの場合、新しいらんちゅうや水草に付着していて飼育槽に入ってしまう事によります。水温が高くなると活発化して繁殖しますので、春から秋にかけて発症率が増えます。とにかく外部の飼育水や水草を入れる時は充分に確認する事、水質悪化を避ける事が予防になります。

治療はどちらも同じで、まずピンセットで取り除く事から始めます。イカリムシは頭部がらんちゅうの皮膚下に潜り込んでいますから、頭部を残さないように慎重に取り除いて下さい。傷口にはメチレンブルーを塗って消毒し、その後濃度0.5〜0.8%、水温25度前後での塩水浴をします。薬浴の併用も効果がありリフィッシュ、トロピカルN、トロピカルゴールドが適しています。

飼育槽にも注意が必要で、この病気が発症した場合まず確実に卵もしくは幼生が蔓延しています。特に卵は薬に対する耐性も高いので根絶が難しく、水の全換え程度では再発します。
上記薬品を使用する場合、2〜3週間ごとに数回薬を入れて卵から孵った幼生の段階で駆除します。もしくは飼育槽を隅々まで洗い、直射日光で天日干しするか、イソジン原液で消毒して下さい。