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稚魚の飼育と選別

稚魚の飼育

宇野系らんちゅうに限らない事ですが、稚魚は通常よりもさらに水温変化に敏感です。5月中は夜から朝にかけて水温が下がる事が多いので、ヒーターなど利用し水温管理しましょう。

餌はお腹の卵のうが消えてから与え始めます。活ミジンコが最適ですが、なければブラインシュリンプで代用して下さい。人工餌でも飼育は出来ますが、稚魚にとっては消化しにくく体調不良の原因にもなりますので、始めはあまりお勧めできません。
活ミジンコ以外の餌は食べ残しが無いように1日2〜3回、5分で食べきる量を与えて下さい。食べ残しはすぐ回収しましょう。活ミジンコの場合は水中のおよその数を計りながら入れておけば、らんちゅうが好きな時に食べる事が出来ます。餌を与え始め1ヶ月以上経った頃から人工餌も併用していきます。稚魚の大きさに合わせておとひめA〜B-2などがいいでしょう。

水換えはだいたい1週間に1回、水温に気をつけて行って下さい。具体的な方法は通常と同じですが、稚魚は強い水流でやネットによって怪我を負う事もありますので、優しく扱い、ゆっくり水出しと注水をするように心がけましょう。

選別

まず選別の大前提として、初心者の方は良い宇野系らんちゅうをたくさん見て、選別眼を養うことが大切です。愛好会や品評会に足を運んで、実際に宇野系らんちゅうを見ながらベテランの方々にお話を聞くことをお勧めします。

何時の段階で選別をするのかは飼育者の判断によりますが、らんちゅうの大きさが1〜2センチに育ち、尾が開いたあたりで第1回目の選別する事が多いと思います。期間にして2〜3週間経った頃です。水換えのタイミングで行うと効率的ですので、この頃の水換えの際に選別用の白い洗面器を用意しておきましょう。

選別は上見が基本です。洗面器の底に非水溶性のマジックでサイズ計測用のメモリを書いておくと後々便利かもしれません。選別の際は水換えも含めて稚魚にストレスを与える事になりますので、扱いや水温水質には充分に気を配って下さい。

1回目の選別では主に奇形と尾の形で判断します。背骨が曲がっている、泳ぎ方がおかしい、他と比べて著しく小さいなど、明らかに様子がおかしいものをハネて(取り除いて)下さい。

尾の形ではフナ尾(上から見て尾が開かず、フナの様な形)、すぼ尾・癒着尾(尾が開いていない)、尾の形が左右対称ではないものを除きます。またこの時点では判断が難しいですが、さし尾(尾の芯が胴体側の尾筒にさしこんでいる)もはじきます。

残す数の目安は全体の約20%以下ですが、明らかに形がおかしいものが多い時はこの限りではありません。1回目の選別ではその後の飼育の為にも、ある程度思い切ってハネて下さい。
明らかに悪い形のものは当然として、迷うものもハネます。

この時点で迷う個体は成長すると迷った原因となった形質も成長し、結局ハネる事になる可能性が高いからです。悪い個体を除くより、良い個体を残す意識で選別すると効率的です。

愛好会などで長年飼育しているベテランの方に教えを請い、理想形の稚魚を実際に見て覚えると良いと思います。

2〜3回目はそれぞれ前回から約1週間後を目安に、水換えの際に行います。この段階でも基本的には尾の形を中心に判断します。

注目する点は尾の芯です。上記したさし尾、つまみ尾(尾芯に余分なヒレがついている)、芯が歪んでいたり重なっていたり顕著に太いものなどをハネます。また尾の形が左右対称でないもの、尾の筋が重なっていたり曲がっているもの、尾肩(尾の外側線)が曲がっていたりまくれているもの、尾筒(尾ヒレ根元から胴体の腰までの間の部分)が長すぎるものなどもハネていきます。約半分になるまで選別します。

4回目は生後約50日あたりで、かなり“らんちゅう”らしい形になっています。尾の形に対しては今までと同じ視点から、より厳密に観察してハネます。
また、この頃から横見して背なりから尾にいたるまでの形を見ましょう。理想的な形は小判型です。背から綺麗に丸みを帯びて尾に到達する形が良く、途中ででこぼこしたり、急に曲がったり、尾筒部分が長かったりしゃくれているものをハネます。特に小さな背びれの様なものが出ているものはらんちゅうから先祖帰りしているものですのでハネましょう。また、横見した時の尾筒に対する尾芯の角度が高過ぎたり低過ぎるものもハネる対象となります。
ただし、この時点での背なりはそれほど厳密に選別しなくても大丈夫です。背なりは飼育環境によってまだ変わりますから、後ほどハネても遅くありません。上見した時にはっきり見た目を損なうような背なりをハネる位でいいでしょう。

青仔、黒仔と呼ばれる段階では、あまり選別は行いません。水換え時に今までの基準を元にしてあまりに形状が悪い個体、成長不良の個体をハネるだけで良いと思います。

生後4ヶ月経ち、色変わりが終わった頃に5回目の選別をします。この頃は基本的な形が決まり始めているので、悪い形質をはじく事からそれぞれの良い部分に注目して優良な個体を残す選別に変えていきます。

今までの見落としを無くすように努め、その上で上見した時に身体が小判型で丸みがあり、ヒレも含めて左右対称である事に注目していきます。

宇野系らんちゅうでは、特に頭部に目を向けて下さい。頭が左右対称で目幅がある程度広く、頭の長さにも注目し、肉瘤の土台となる頭蓋骨が発達しているものを残します。また色彩がはっきりしているもの、模様が左右対称のもの、左右対称でなくても上見した時に体型がくっきり見えて美しく映えるデザインのもの、鱗が際立って細かく綺麗なものを残していきます。
この段階は品評会出品や将来の種魚を視野に入れた選別ですので、ご自身の経験から宇野系らんちゅうの特徴と美しさを表現している個体を選んで下さい。ただし、宇野系らんちゅうで最も重要視される特徴である肉瘤はこの時はまだまだ未発達です。はっきりとした結果が出るのは三歳魚以降になるでしょう。

5回目以降は育っていく肉瘤の形と色彩の発達を見ながらゆっくり時間をかけて選別していく事になります。宇野系らんちゅうの選別は、らんちゅうの生涯にわたってずっと行われていくものなのかもしれません。